西本 本日は、「GDS-Index」の「Most Improved Destination Award」を受賞された熊本市の大西市長と、日本政府観光局(JNTO)の若松理事に、まちづくりとMICE国際競争力強化について
のお考えをお聞きしたいと思います。
GDS-Index(Global Destination Sustainability-Index) の取組みは、ICCAに加盟する北欧の都市を中心に誕生しました。2016年からは世界的な活動へ発展し、現在、世界のMICE先進都市等100都市が加盟する「観光・イベントの視点から都市のサステナビリティへの取組みを可視化する世界唯一の指標」です。アジアからの加盟はまだ多くはなく、日本では観光庁が2023年度事業としてGDS-Indexへのチャレンジを支援。熊本市と高松市が挑戦されました。
GDS-Indexでは、サステナビリティへの取組みを英語で回答する必要があり、回答を裏付けるエビデンスも確認した上でスコア評価を行います。熊本市・高松市ではこの初年度の学びをもとに、市の各部局とDMOが連携して1年がかりでしっかりと準備されました。「Most Improved Destination Award」は、前年度対比の伸び率の高さを表彰するもので、熊本市の伸び率が世界で最も高かったことから今回の受賞となりました。
それではまず、熊本市のまちづくりにおけるMICE誘致の位置づけについて、大西市長にお伺いしたいと思います。
熊本地震を転換点に「人の力」を信じて
大西 熊本市のまちづくりは、2016年の熊本地震が大きな転換点となりました。「全ての市民の日常が、突然、続かなくなる」という熊本市最大の危機に直面したのです。この経験が皆で持続可能な生活や未来をリアルに、真剣に考え、これまでの価値観を見直すきっかけとなりました。そして熊本市は、2019年にSDGs未来都市に認定されました。
MICEについては地震の以前から施 設建設の計画があり、九州の中心というロケーションを活かし、交流人口を拡大させ経済的にも持続可能な発展を
遂げるビジョンを描いていました。しかし熊本地震を受け、一度立ち止まって進むべき方向性について再検討を行いました。「復旧・復興、そして未来へ」をコンセプトにまちづくりビジョンと向き合うなかで、MICEの推進に関しても持続可能な生活や都市の未来につなげようと認識を共有。そこで熊本市はMICEを通して、「持続可能性や社会や経済の発展について、一度、立ち止まって考える機会を提供する」、これを都市の特色として打ち出そうと考えました。当然、MICE推進に係るKPIを定めた誘致戦略を持っていますが、行間にはこうした思いを込めていることを受け止めていただけると嬉しく思います。