
経済波及効果に加え、学術・産業の高度化、札幌の国際的な都市ブランドの向上、観光閑散期における道外からの誘客促進等、街全体への幅広い効果をもたらすことから、継続的なMICEの誘致・開催に向けた取組みを進めている札幌市は、「新MICE施設整備基本方針」を発表した。札幌市では、2018(平成30)年5月に「(仮称)新MICE施設整備基本計画」を策定しているが、新型コロナウイルス感染症(以下:コロナ)の影響を受けて事業の実施を延期していた。9月に発表された「新MICE施設整備基本方針」は、コロナ禍後のMICE市場の変化や建設費の高騰の影響等を加味して策定されたものである。
これによると建設地は、MICE誘致の都市間競争に打ち勝つための訴求力のあるコンテンツを有する中島公園駅周辺地区の札幌パークホテル跡地(2027年2月末に閉館)の北側で、開業は2033年度以降をめざす。事業費は当初想定(2018年)の約280億円から592億円(内訳:建物整備費487億円、土地取得費105億円)へ拡大。その一方で年間1,220件のMICEを開催し、運営収支は年間約2.2億円(収入:約10.6億円/年、支出:約8.3億円/年)、札幌市内への経済波及効果は約492億円を見込み、約3,200人の365日雇用効果が期待されている。
再開発事業手法による新 MICE 施設と新ホテルの一体整備をめざし、(株)グランビスタホテル&リゾート及び(株)サンケイビル(以下:事業者)と検討を進めてきたが、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて事業を延期することとなった。
その後、事業環境の変化等を踏まえた事業者との協議を経て、新 MICE 施設と新ホテルについて、一体的な利用に向けた連携を前提に、市と事業者がそれぞれ建設をめざすこととし、事業手法や MICE 市場の動向の変化、建設費の高騰の影響等を加味し、改めて新 MICE 施設の施設規模や投資効果について検証を行ってきた。
1)MICE市場の動向
コロナ禍以降、国際会議の開催件数は回復傾向にあり、一時増加した対面とオンラインのハイブリット開催も減少し、対面に回帰してきている。国内他都市も積極的にMICE 施設の整備を進めるなか、札幌市は後れをとっており、他のグローバルMICE都市に比べて大規模会議の開催件数は大きく劣後している。
2)潜在需要への対応
札幌市は食や観光といった都市としての魅力が高く MICE 開催のニーズは十分にあるが、既存施設がホテルや飲食店に隣接していないことや、多目的ホールが併設していない、会議室数が不足しているといった施設の機能不足により、大規模会議等の需要を取りこぼしてしまっている。