月刊「MICEJAPAN」

2016年7月号
寄稿 TFWA APE&C 2016 リポート 世界免税協会 日本代表 菊地 茂

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5月8日(日)~12日(木)の5日間、シンガポールの統合型リゾート「マリーナベイ・サンズ」(Marina Bay SandsExpo and Convention Centre)で、「TFWA Asia Pacifi cExhibition & Conference 2016: The Duty Free and Travel Retail Asia Pacifi c Summit」を開催した。今イベントは世界の免税・トラベルリテール(Duty Free & Travel Retail)業界のアジア太平洋地域における最大規模の展示会と国際会議を併設したビジネスイベントで、毎年、この時期にシンガポールで開催している。

イベント初日には全体会議とワークショップがプログラムされ、世界の政治・経済情勢、グローバル免税・トラベルリテールビジネスの最新動向などについて、業界のオピニオンリーダーによる講演や討論会が行われた。2日目からは3日間に渡り展示会が開催され、出展規模は昨年の過去最高を更新し、前年比9%増の310社のグローバルブランドが参加。このうち新規出展は79社に達した。また、来場規模でも前年比12%増となり、空港、エアライン、クルーズライン、免税事業者、エージェントなど1,186社から2,905人のバイヤーが参加。会期中はゴルフコンペ、太極拳のレッスン、プールサイド・パーティなどさまざまなソーシャルイベントも用意され、リラックスした雰囲気の中で参加者間の交流が図られた。

主催の世界免税協会(Tax Free World Association, TFWA)は、日本ではあまり馴染みがないが、免税・トラベルリテール産業の発展、権益の保護を目的に1984年に設立された非営利の業界団体。500社以上の国際的なブランドメーカーで組織され、パリに本部を置く。石屋製菓、エース、MTG、コーセー、資生堂、JT、ひよ子、ロイズコンフェクトなどの日本企業もTFWAの会員になっている。TFWAの行う事業にはカンヌ、シンガポールで開催する展示会と国際会議を併設する統合型ビジネスイベント、ドバイ、北京などで開催する国際会議・ワークショップ、各種マーケットリサーチ、広報、各国政府への働き掛け、CSR活動などがある。

変化の中での方向性の見極め

21回目を迎えた TFWA Asia Pacific Exhibition & Conference 2016(TFWA APE&C 2016) では"Navigating Through Change"(変化の中での方向性の見極め)というテーマのもと、免税・トラベルリテールビジネスに影響を及ぼすグローバルな変化について考察が行われた。

実際、これまでアジア太平洋地域が世界の免税・トラベルリテールビジネスの成長を強力に牽引してきたが、ここにきて激しい通貨変動、高まる地政学的な緊張、国際テロリズムそして経済成長の減速(特に中国)など、これまで安定して成長を続けてきたこの地域にも不安定要因が起こっている。また、ライフスタイルや価値観の変化が消費行動に与える影響についても取り上げた。近年、デジタル時代の「ミレニアルトラベラー=ミレニアル世代」(1980~2000年生まれの世代)が社会のあり方を変容させる世代として注目を集めている。"デジタルネイティブ"のこの世代は、ブランドなどの既存の価値観に影響されず、ネット上のクチコミ情報を参考に自らの価値観にあった商品や体験を求めるなど、それ以前の世代とは違った価値観で消費行動を行うことがリサーチなどで指摘されている。

昨年の業況には、明らかにこれら変化の影響が表れている。これまで二桁成長を続けてきた世界免税・トラベルリテール業界の売上高は、昨年622億米ドル(約7.2兆円)で前年比2.3%減と、9.11とリーマンショック以来の前年割れとなった。

一方、アジア太平洋地域は252億米ドル(約3兆円)で前年比2.8%増と成長を持続したものの、成長率はこれまでに比べ大きく鈍化した。地域的にみると、ヨーロッパ、南北アメリカは前年割れ、アジア以外では中東が前年比1%増で辛うじてマイナスを免れた。

 


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